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自動運転の責任の所在はどうなるのか

自動運転車による死亡事故についての注目の判決

自動運転は、事故のリスクを下げることやドライバーの負担を大きく軽減する最新技術として関心を集め、各国で導入が進められています。
しかし、やはり不安な点も存在します。
その代表的なものが、万が一事故が生じた場合に、誰が責任を取るのかという問題です。
ハンドルを握りアクセルを踏んでいるドライバーがいれば、当然その責任はドライバーにかかってきます。
しかし、自動運転の場合はドライバーが操作をしていないわけですから、果たして自己の責任はドライバーになるのか、それともシステムを提供しているメーカー側になるのかという疑問が生じます。

こうした問題について、2018年にアメリカで注目を集める裁判が行われました。
Uberテクノロジーの自動運転車がテストドライブをしている時に、道路を渡っていた歩行者をはねて亡くなってしまうという事故が起きたのです。
これは、自動運転カーによる初めての死亡事故となっています。

裁判の中では、車とドライバーがどのような状況だったのかに注意が集まりました。
ドライバーはスマホを使ってテレビを観ていたことが分かり、車の操作をしないだけでなく周囲の状況確認もしていなかった状況でした。
そして、自動車の自動ブレーキシステムが入っていなかったことも判明します。

こうしたことから、死亡事故が起きたのは自動運転のシステムに欠陥があったわけでなく、ドライバーが必要な状況確認と設定をしなかったというミスが原因であると判断されます。
調査を行った国家運輸安全委員会は、走行中のおよそ3分の1の時間をスマホなどの操作に充てていて、道路や周りの状況を見ていなかったことを報告しています。
そのため、責任の多くはドライバーにあると結論したのです。

自動運転に関する企業に注意を促す判決となった

こうした結果に基づいて、裁判所はドライバーが主な原因だとして、日本でいう危険運転致死罪との判決を下し、3年間にわたる監視付きの保護観察処分とします。
同時に、裁判所はドライバーが車を運転するということには、大きな責任を持ち安全に気を配るということは最優先事項であるとのコメントも発しています。
実際に国家運輸安全委員会は、この度事故を起こした車には、横断歩道以外の場所で道路を横断する歩行者が存在する可能性について考えた設計がなされていないと報告しています。
そのため、少なくてもUberの自動運転車には自動運転に関するシステム管理が不十分であるとも述べています。

あくまでもこの裁判は、ドライバーの過失が主な原因であるとはしています。
しかし、自動運転システムを提供する企業に対する注意を促すものともなりました。
たとえ自動運転が実用化されるとしても、ドライバーの監視義務がなくなるわけでないという点を明確にしたのです。